6/17 上を下へのジレッタ@森ノ宮ピロティホール

今年になってからは初めてで、およそ1年ぶりのピロティホール。先行では落選に次ぐ落選だったけど、ありがたいことに直前でチケットをお譲り頂いて観に行って来た。

ツイッターでも既につぶやいたので転載。

あらすじは以下の通り(公式パンフ参照しつつ一部引用したりしてます)

舞台は1960〜1980年代の東京。自称天才テレビディレクターの門前市郎(横山裕は、大手芸能プロダクション「竹中プロ」の社長竹中郁子(銀粉蝶の逆鱗に触れ仕事を干されてしまう。再起を図る門前は、竹中プロをクビになった覆面歌手の晴美なぎさ(本名:越後君子)を呼び出すが、お世辞にも美人とは言えないその容貌に愕然とする。しかし、彼女が空腹の限界を超えると絶世の美女になることを発見し、小百合チエ(中川翔子という芸名を与えて、トップスターを目指すべく「門前プロ」を立ち上げる。そんなふたりの前に、チエの幼なじみで婚約者の山辺音彦(浜野謙太)が現れる。門前のチエに対する扱いが酷いと反発する山辺と、なんとか話をつけようとした門前だったが、工事現場でもみ合う内に勢い余って山辺が深い穴に転落してしまう。

門前は山辺が女と逃げたことにして切り抜けようとしたが、穴に転落した山辺は、自身の妄想の世界である「ジレッタ」に逃げ込むことで、なんと3ヶ月も生きながらえることに成功していた。山辺の生存を知った門前は、最初こそ戸惑うものの、「ジレッタ」の世界を山辺以外の人間も体験できることに目をつける。そして、「ジレッタ」がラジオやテレビを超える一大メディアになることを確信し、有木足(竹中直人社長に取り入って「ジレッタ」の万博出展を成功させる。その際、「ジレッタ」を利用して竹中プロの社長への復讐も果たすことにも成功するが、竹中プロは、「ジレッタ」が社長が精神を破綻させたとして山辺を訴える。しかし、判決は無罪。実は裏で有木社長が手を引いており、新たな宣伝メディアとしての「ジレッタ」に目をつけた内閣に手を貸すことで、自社事業の便宜を図ってもらおうと企んでいた。門前はこのチャンスを利用しない手はないと考え、「公共放送」として「ジレッタ」を日本全国に放送するための準備を整えて行く。

一年が過ぎ、間もなく「ジレッタ」の初放送が行われようとした頃、再起を誓った際に離婚したかつての妻、間リエ(本仮家ユイカ)が門前の前に現れる。リエの突き放すような物言いや別の男性と再婚するという事実に門前はショックを受ける。そのショックもあってか、「ジレッタ」の初放送について、事前に打ち合わせをして作ったつまらない台本に従わなくても良い、好きにやれば良いと、門前は山辺をけしかける。日本全国への「ジレッタ」の初放送で山辺が好き勝手にやった結果、門前と山辺のふたりは国から指名手配されることになり、秘密裏にリエが住むジュネーブへと向かう。

ジュネーブへ向かう道中、山辺はヘッドホンなどの機械を利用することなく、「ジレッタ」を自分以外の人々に体験させることに偶然成功する。門前は、超音波さえあれば機械がなくても「ジレッタ」の体験が可能になることを知り、さらなる企みを考えつく。それは、月が地球に衝突するという「ジレッタ」を、世界中の人に体験させることだった。アメリカでのロケット発射についてのニュース放映に合わせて、超音波を世界中に発することで、世界中の人々にジレッタを体験させることができると考えたのだ(正直ここの仕組みはよくわからなかった)。

だが、ロケット発射の直前になって、リエに門前との関係を問いつめられ逆上したチエが誤って川に落下、一命を取り留めたかに思えたがそのまま帰らぬ人となってしまう。しかし、アメリカのマフィアをも巻き込んだ計画をストップさせるわけにはいかない。ロケットの発射に合わせて山辺は「ジレッタ」の世界を展開させはじめるが、チエを失った世界で生きる意味は無いとして自ら死を選ぶ。門前はそんな山辺を必死に引き留めようとするも、ジレッタの中に閉じ込められてしまう(閉じ込められたのか……?)。

舞台のセットは山辺が転落した穴の場面に戻り、ジレッタの最後に必ずあらわれていた「つづく」という札が舞台上方から降りて来る。しばらくの静けさ。「つづく」がめくれて「おしまい」との文字。暗転。

書いてたらすごい長くなった。あらすじじゃない。こういう話。後半とかは公式じゃなくて完全に記憶からの書き起こしなので解釈入りまくってる。

 

最も印象に残ったのは、横山裕演じる門前市郎が「すべてまやかし すべて虚構」と歌う冒頭の場面。

お芝居のあらすじを全く頭に入れずに、原作も読まずに観に行ったので、正直この場面を観たその瞬間は特になんとも思ってなかったけど、作品全体を観終わった今、このシーンが強烈なインパクトを伴ってよみがえって来る。ジャニーズのなかでもトップアイドル張ってる男によくこんなセリフ歌わせたな(もちろん良い意味で)。

ジレッタのチケットで落選祭りしてたときに、ジャニーズが出演するということはつまり横山裕目当てのファンが多数を占めてしまい、一般のお客さんがあまり入れなくなってしまうということで、それってどうなんだろう、みたいなことを考えてた。けど、今思うのは、このお芝居の主役が横山裕であることで、このお芝居はさらに面白くなっているということ。上記のツイートでも同じこと言ってるけど。

今回の主人公を演じる俳優が、横山裕という個人である必要があるかっていうと、そこまででもないように思う(と言ってもスタイルとか雰囲気とか顔とか、そういう点では重要になってくるけど)。重要なのは、作品の中で「大手芸能プロダクション」や「プロダクションに所属するアイドル」が強烈な皮肉の対象になっているにも関わらず、その作品(=虚構)の主役を演じている「大手芸能プロダクションに所属するアイドル」であるという現実

プロダクションの社長とマネージャーがジレッタの中でアイドルたち(聖子ちゃんとかいた)に詰め寄られてる場面はほんとにゾクゾクした。

公式パンフに今回のお芝居で使われた曲の歌詞が全部載ってるんだけど、社長がアイドルたちに詰め寄られている場面での歌詞、改めて見るとめちゃくちゃにヤバい。

もう限界 不眠不休で歌ったわ!

もう限界! 歌いたくもない歌を

歌えないなら 干しちゃおう

歌いたくもない歌を歌わされるアイドル。そんなことを歌うお芝居の主人公を演じる男も、まさに「歌いたくもない歌を」歌わされて来たのかもしれない。なんてことを考えるともうたまらないわけで。ちなみにこの部分では、大きな(?)洗濯ひもが出て来て、社長とマネージャーが「干されちゃう」という婉曲的な演出があってもうゾクゾクしまくりだった。鳥肌モンだった。あと個人的にハッとした社長のソロパート。

アイドルになったから アイドルを名乗るんじゃない

アイドルを名乗るから アイドルになれるのよ

先手必勝 こっちが決めるのよ

アイドルってなんだろうって本質をここでサクッと突かれたような気がした。めちゃくちゃ人気が出たバンドが「アイドルみたい」って揶揄されながらも決して「アイドル」にはなれないのってなんでだろうって考えてたけど、まさにこういうことなのかもしれない。彼らは「アイドル」を名乗らない。反対に、こないだのメトロックに出演した関ジャニ∞が絶対的に「アイドル」でいることから逃れられないし逃れようともしない理由も分かった(たぶん)。すごく単純だけど、彼らが「アイドル」だと名乗ってきたからだ。

 

そして印象的だった場面もうひとつ。ジレッタを公共放送みたく日本全国へ放送(?)したときのこと。ジレッタを利用して国民に対して印象操作を行いたい総理大臣と、内閣に便宜を図ることで自社の利益を確保したい有木社長が、ふたりで一緒に最初のジレッタの放送を体験する場面。元妻の登場と告白に動揺しまくる門前が山辺に、あらかじめ準備していたぬるい台本は無視して好きにやるようけしかけたことも知らずに。

放送が始まる。純白のドレスを着たチエが現れ、日本をただひたすらに賞賛することばで歌う。そこに山辺が加わる。

治安もいいし 景気もいいし 住みよい社会

強い財界 頼れる政府 大好きな日本

最近の「日本スゴイ!」アピールがすごいバラエティ番組みたいだなと思いながら観てたら、直後に総理が「これぞあるべき公共放送の姿!」ってセリフを言って震えた。公共放送はNHKのことを指しているんだろうけど、というかいくつか前のシーンで「公共放送として(ジレッタを放送しよう)」という誰かのセリフにチエが「NHKみたいな?」と返してたし間違いないんだろうけど、そんなハッキリ言う!?!?!っていう(笑)。皮肉って「国営放送」って言っちゃうことも出来るのに、それをあえてせず正しく「公共放送」と言うところがまたゾクゾクした。(よくある勘違いだけどNHKは国営放送ではなく公共放送。国家で予算の承認かなんかはあるけど国民ひとりひとりから受信料もらって社会のためにやってますってスタンスで、国の宣伝メディアってわけじゃないよっていう)

ここまでで既にだいぶ鳥肌だったけど、それ以上にニヤニヤしたのがその直後の有木社長のセリフ。

「味も素っ気もなくてたまらないですなあ」(衝撃的だったのにうろ覚え)

単純に考えると確かにNHKの番組ってなんか地味だもんなーぐらいで終わるけど。強火のNHK担なので、いろいろ考えちゃってこの場面はほんとめちゃくちゃニヤニヤした。スポンサーからお金もらって番組作ってる民放との比較で、NHKは自由に番組制作が出来るとかって言われることがあるけど、NHKは全国民からの受信料で成り立っているって仕組みだから、逆に言うと全国民がスポンサーみたいなものらしくて、つまり、自由度とか気遣いっていう点では民放と大きな差はないらしい。むしろ全国民がスポンサーなわけだからそのぶんクレームにも敏感で、各方面からお叱りが来ないように色々考えて番組作るみたいなとこがあるとかないとか。各方面に配慮した結果「味がなくて素っ気ない」番組が出来上がっちゃうことも多いのかな、って考えてしまってもうほんとニヤニヤした。そこまで深いこと考えてなかったのかもしれないけど。

ちなみにこの歌の続き。山辺が台本を無視してやったので、だいぶひどいことになっている。

すべてまやかし すべては虚構

ヤバいものには ふたをして

見て見ぬふりで 先へ送る

「言わぬが花」で黙ってましょう

顔で泣いて背中で笑う

島国根性 出る杭は打て

おのれ以外は 横並び

アンビバレントな ニッポン社会

歌詞の切れ味が鋭すぎて血だらけになりながらも「最高だ……」って泣いてるみたいな感じ。というかサントラがCDにならないとかいう公式発表があるらしいけど本当に意味がわからない。パッケージにして売ってください。ダウンロードでもいいです。とにかく売ってほしい。どう考えてもサントラ欲しい。歌詞も最高だけど曲も最高なんだよ。他のキャストの歌唱力がすごすぎて横山裕の歌唱力がちょっと霞んでるけど(ディスじゃないよ!!!!!)そこまた作品の味だから。

映像にもならないし再演もないって意味がわからなさすぎて無理。あの安田顕のひとり芝居でさえ映像になったのに!?!500人ぐらいしか入らないような能楽堂でやったひとり芝居でさえパッケージになって売られているのに!?!?どうして?!?!考え直したほうがいいよ(CV:大倉)。

 

その他に印象に残った場面は箇条書きで。

・総理をはじめ政治家たちに見せたジレッタにて、国会答弁であいまいな回答で質問をかわす議員のセリフが今の政権そのまんまで笑う。笑えない。

山辺が創り出したジレッタ初お披露目みたいな場面で、山辺はジレッタの中でハーレム状態。その場面を歌にのせる山辺山辺っていうか在日ファンクの浜野謙太で最高だった。去年行ったフジロック思い出した。(ちなみにどうでもいい自慢をするとそのフジロックの会場内で浜野謙太さんに偶然遭遇して握手をしてもらったことがあってその節はありがとうございました)

・途中、竹中直人さんがセリフを間違えたか噛んだかなんかでそのあと横山くんも笑いながらセリフ言ってた場面があってみんなso cuteだった。こういうのがあるからお芝居ってやめられない。

竹中直人(有木社長)「ずおっと」銀粉蝶(たしか総理)「ずおっとってなんですか」っていう掛け合いよかった。アドリブかな?

しょこたんの歌のうまさがパネェ。そしてかわいい。動きが漫画っぽくてかわいい。かわいい。あと浜野謙太とのサイズ感がめっちゃちょうど良くてGOOD(誰目線)。

・マイナーチェンジする門前の衣装〜〜〜〜!!黒タートルネックも良かったけど黒いシャツに銀色のネクタイ(一番調子乗ってるとき)がたいそう良かった。

 

こんな感じか。まだまだ書きたいこといっぱいある。バックダンサー(って呼んでいいのか?)の方たちとか、ほんとにもーめちゃくちゃ良いもの見せてもらった。楽しかったけどすごい色んなものがひっかかった。これぞ最高のエンターテイメント。できればもう1回ぐらい観たいけど、あと3回で終わっちゃうから難しいかな。

おわり